○栄町消防火災調査規程
令和4年3月18日
消防本部訓令第4号
目次
第1章 総則(第1条―第15条)
第2章 原因調査(第16条―第34条)
第3章 損害調査(第35条―第38条)
第4章 調査資料(第39条―第44条)
第5章 調査書類の作成(第45条―第48条)
第6章 報告(第49条)
第7章 り災の証明(第50条)
第8章 震災時の火災調査(第51条―第56条)
第9章 雑則(第57条―第60条)
付則
第1章 総則
(趣旨)
第1条 この訓令は、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章の規定に基づく火災の調査(以下「調査」という。)の執行及び事務処理について必要な事項を定めるものとする。
(1) 火災 人の意図に反して発生し若しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。
(2) 調査 火災現場から火災予防を主とする消防行政施策の資料を収集するための質問、現場見分及び鑑定、実験等の一連の行動をいう。
(3) 調査員 調査に従事する消防職員をいう。
(4) 関係のある者 次に掲げる者をいう。
ア 法第2条第4項に規定する関係者
イ 火災を発生させた者
ウ 火災を発見した者若しくは通報した者又は初期消火活動を行った者
エ 調査の参考人になると認められる者
オ その他火災に直接関係のある者又は関係があると認められる者
(調査の区分)
第3条 調査は、火災原因調査及び火災損害調査に区分する。
2 火災原因調査は、次に掲げる事項について究明するために行うものとする。
(1) 出火原因 火災に至った発火源、経過及び着火物並びに出火箇所の状況
(2) 初期消火等 火災の発見、消火及び通報の状況
(3) 避難 火災現場における避難者の避難状況
(4) 消防用設備 消防用設備の使用及び作動の状況
3 火災損害調査は、次に掲げる事項を明らかにするために行うものとする。
(1) 焼き損害 火災によって焼けた物及び熱によって破損した物並びに煙による汚損の状況
(2) 消火損害 消火活動によって受けた水害、破損及び汚損の状況
(3) 爆発損害 爆発現象の破壊作用によって受けた破損及び汚損の状況
(4) 死傷者 火災に起因して生じた死者及び負傷者の状況
(火災件数)
第4条 火災の件数は、一つの出火点から拡大したもので、出火から鎮火に至るまでを1件とする。ただし、次の場合は、当該各号に掲げるとおりとする。
(1) 飛火による火災及び同一の消防対象物で火災現場から消防隊が引き揚げた後に発生した場合は、別件の火災とする。
(2) 互いに意志の連絡のない2人以上の者による放火又は火遊びは、同一の消防対象物から同時に出火してもそれぞれ別件の火災とする。
(3) 同一の消防対象物に出火点が2箇所以上ある次の火災は、1件の火災とする。
ア 漏電点が同一の漏電による火災
イ 地震、落雷等自然現象による多発火災
ウ 同一人の連続行為による放火
(火災の種別)
第5条 火災の種別は、次に掲げる区分とする。
(1) 建物火災 建物又はその収容物が焼損した火災
(2) 林野火災 森林、原野又は牧野が焼損した火災
(3) 車両火災 自動車車両、鉄道車両及び被けん引車又はこれらの積載物が焼損した火災
(4) 船舶火災 船舶又はその積載物が焼損した火災
(5) 航空機火災 航空機又はその積載物が焼損した火災
(6) その他の火災 前各号に該当しない火災
2 前項各号の火災が複合するときは、焼き損害額の大なるものを種別とする。ただし、その態様により焼き損害額の大なるものの種別によることが社会通念上適当でないと認められるときはこの限りでない。
(焼損程度の区分)
第6条 焼損程度は、次に掲げる区分とする。
(1) 全焼 建物の焼き損害額が火災前の建物評価額の70パーセント以上のもの又はこれ未満であっても残存部分に補修を加えても再使用できないもの。
(2) 半焼 建物の焼き損害額が火災前の建物評価額の20パーセント以上のもので全焼に該当しないもの。
(3) 部分焼 建物の焼き損害額が火災前の建物評価額の20パーセント未満のものでぼやに該当しないもの。
(4) ぼや 建物の焼き損害額が火災前の建物評価額の10パーセント未満であり焼損床面積が1平方メートル未満のもの、建物の焼き損害額が火災前の建物評価額の10パーセント未満であり焼損表面積が1平方メートル未満のもの、又は、収容物のみ焼損したもの。
(調査体制の確立)
第7条 消防長及び消防署長(以下「消防長等」という。)は、調査に必要な人員及び機材を整備し、調査体制を確立しておかなければならない。
(常時の心得)
第8条 調査員は常に火災の現象、関係法令その他調査に必要な知識を習得し、調査技術を研究して調査能力の向上に努めなければならない。
(相互協力)
第9条 調査員は、相互に連絡協調を図り、調査の円滑を期すとともに原因の究明に当たっては綿密詳細に行わなければならない。
(法令の遵守)
第10条 調査員は、法その他の関係法令を遵守し、個人の自由及び権利を不当に侵害したり、調査上知り得た秘密をみだりに他に漏らしてはならない。
(民事不介入)
第11条 調査員は、調査事務の執行に際して関係者の民事的紛争等に関与してはならない。
(警察機関等との協力)
第12条 調査員は、警察機関その他関係機関(以下「警察機関等」という。)と緊密な連絡を保ち相互に協力して調査に当たらなければならない。
(接遇)
第13条 調査員は、関係のある者に接するときは親切を旨とし、質問は時機を失することなく真実を聴取するよう努めなければならない。
(関係のある者の承諾)
第14条 調査員は、調査をするときは原則として関係のある者の承諾を得て行うものとする。
第2章 原因調査
(調査の原則)
第16条 調査は、事実の確認を主眼とし、先入観又は個人的感情にとらわれることなく科学的な方法による確認と合理的な判断により事実の究明に努めなければならない。
(調査の着手)
第17条 調査は、火災の覚知と同時に着手し、火災時及び鎮火後にわたって行うものとする。
(出火出動時等の見分)
第18条 調査員及び消防隊員(救急隊員を含む。以下同じ。)は、出動途上、火災現場(以下「現場」という。)到着時及びその後の状況について十分見分しておかなければならない。
(消防活動中の現場保存)
第19条 消防隊員は、出火場所及びその付近に細心の注意をはらい調査に支障のないよう原形の保存に努めなければならない。
2 消防隊員は、消防活動のためやむを得ず出火場所の付近の物件を移動又は破壊しようとするときは、現状がわかるよう必要な措置をとらなければならない。
(消防活動後の現場保存)
第20条 消防長等は、次により火災鎮火後の現場を保存しなければならない。ただし、警察機関等によって現場保存がなされているときはこの限りでない。
(1) 現場保存区域は、警察機関等と協議して決定する。
(2) 現場保存区域は、必要最小限度の範囲にとどめる。
(3) 現場保存区域は、縄張りその他の方法で表示する。
(4) 現場保存区域は、必要と認める者以外みだりに出入りさせてはならない。
(5) 現場保存区域は、調査の進行に伴い順次縮小解除するものとする。
(焼死者等の取扱い)
第21条 調査員及び消防隊員は、現場において焼死者又はその他の死者を発見したときは、直ちに現場最高指揮者に報告しなければならない。
2 前項の報告を受けた現場最高指揮者は、所轄の警察署長に通報し、その現場保存に努めなければならない。
(実況見分等)
第22条 調査員は、火災現場その他関係ある場所及び物件について、綿密詳細に実況見分、鑑識見分及び鑑定見分を行い、火災原因決定資料の発見、入手及び被害状況の把握に努めなければならない。
(見分の立会い)
第23条 見分は、努めて関係のある者に立会いを求めて行うものとする。ただし、特別な事情により関係のある者の立会いが困難な場合は、警察官又は近親者、その他適当な者に立会いを求めるものとする。
2 見分の立会いは、調査しようとする場所、物件に直接関係する者を優先しなければならない。
3 調査のため必要がある場合は、関係のある者の承諾を得て関係物件の製造者等に立会いを求めることができる。
4 前各項により立会いを求めた場合は、立会い人の安全管理、健康管理等に細心の配意をしなければならない。
(図面及び写真)
第24条 調査員は、実況見分、鑑識見分及び鑑定見分を行ったときは、内容を明確にするため図面及び写真により記録しなければならない。
(質問)
第25条 調査員は、原因の究明又は被害状況の把握のため必要がある場合は、関係のある者に対し質問を行いその事実の確認に努めなければならない。
2 警察官に逮捕された放火又は失火の犯罪の被疑者に対し質問するときは、所轄の警察署長の承諾を得て行い、捜査に支障を及ぼさないように留意しなければならない。
4 前項の質問調書を作成した場合は、被質問者に読み聞かせ又は閲覧させ、誤りのない旨を確認させた後署名を求めなければならない。ただし、これを拒んだ場合、若しくは署名することができない相当な理由があると認められる場合はこの限りではない。
(聞き込み調査)
第26条 調査員は、現場又はその他の場所において関係のある者に対する聞き込み調査を行い、必要な情報の収集に努めなければならない。
3 前項の聞き込み調書を作成した場合は、供述者に読み聞かせ又は閲覧させ、誤りのない旨を確認させた後署名を求めなければならない。ただし、これを拒んだ場合、若しくは署名することができない相当な理由があると認められる場合はこの限りではない。
(任意供述の確保)
第27条 調査員は、関係のある者から任意の供述を得るよう心がけ、その場所、時機等を考慮し、みだりにその供述を誘導してはならない。
(伝聞の排除)
第28条 調査員は、伝聞による供述を排除し、事実の供述を得るよう努めなければならない。
(少年に対する取扱い)
第29条 調査員は、少年(少年法(昭和23年法律第168号)第2条第1項に規定する少年をいう。以下同じ。)の関係する火災の調査を行うに当たっては、それらの者の将来又は現況を考慮して、温情と理解をもってこれを行わなければならない。
2 調査員は、少年に質問し、又は実況見分の立会人とする場合は、保護者等を立ち会わせなければならない。
3 調査のため特に必要があると認める場合又は当該少年の年齢、心情、その他諸般の事情を考慮して支障がないと認めるときは他の法令に抵触しない限りにおいて前項によらないことができる。
4 少年の失火又は放火による火災について、住民、報道機関等に発表する場合は、氏名、年齢、住所等本人を推知できるような情報を漏らしてはならない。
(防火管理等調査)
第31条 調査員は、火災に至る要員及び死傷者の発生等の事項を明確にするため、必要に応じて防火管理等調査書(別記第9号様式)を作成するものとする。
(火災原因の決定)
第32条 火災原因は、実況(鑑識)見分調書、出火出動時における見分調書、質問調書及び実験データその他関係資料を総合的に検討し、科学的かつ合理的に考察して決定しなければならない。
(1) 建物火災で損害額が計上されないもの
(2) 林野火災で損害額が計上されないもの
(3) 車両火災で損害額が計上されないもの
(4) その他の火災で損害額が計上されないもの
(5) 焼損規模が軽微な火災
(原因決定の区分)
第34条 火災原因の決定は、次のとおり区分する。
(1) 断定 実況(鑑識)見分調書等の調査書類及び収集した資料を統合することにより、全く疑う余地がなく極めて具体的かつ科学的にその原因が決定され、少しの推理も必要としないものをいう。
(2) 判定 実況(鑑識)見分調書等の調査書類及び収集した資料のみでは、具体的かつ科学的にその原因を断定することができないが、多少の推理を加えることにより疑う余地を残さないものをいう。
(3) 推定 実況(鑑識)見分調書等の調査書類及び収集した資料によっては、その原因を直接判定することはできないが、当該資料を基礎として専門的立場から多少の推理を加えることにより合理的にその原因を推定できるものをいう。
(4) 不明 原因を決定するに足りる内容の実況(鑑識)見分調書等の調査書類及び収集した資料が極めて少なく、これに推理を加えてもその原因を合理的に推定できないものをいう。
第3章 損害調査
(り災物件の調査)
第35条 調査員は、火災により焼損、破損、水損及び汚損した物件等(以下「り災物件」という。)を調査し、正確な損害の把握に努めなければならない。
(損害額の決定)
第37条 調査員は、調査により把握した、り災物件及びり災物件明細報告書を総合的に検討し、損害額を決定しなければならない。
(死傷者の調査)
第38条 調査員は、火災に起因して死傷者が発生したときは、その状況を調査し、死傷者調査書(別記第18号様式)を作成しなければならない。
第4章 調査資料
(官公署への照会)
第39条 消防長等は、調査のため必要と認めるときは、官公署に対し必要な事項の照会を求めることができる。
(資料の提出)
第40条 消防長等は、調査のため必要と認めるときは、関係のある者に対し資料の提出を任意で求めるものとする。
(資料提出命令)
第41条 消防長等は、調査のため特に必要と認めるときは、法第32条第1項及び法第34条第1項の規定により、所有者、管理者、占有者及び火災の原因である疑いがあると認められる製品を製造し、又は輸入したものに対し資料の提出を命ずることができる。
(資料の保管及び処分)
第43条 消防長等は、資料を保管する場合は、当該資料に保管票(別記第22号様式)を付して調査が終了するまで保管しなければならない。
3 資料提出者が資料の所有権を放棄したときは、調査終了後適宜処分するものとする。
(鑑定の依頼)
第44条 消防長等は、調査のため特に必要がある場合は学識経験者又は関係官公署等に対し、資料の鑑定を依頼することができるものとする。
第5章 調査書類の作成
(書類作成上の原則)
第45条 調査書類の作成は、その事実をありのまま明瞭に表わし、誇張を避け平易にして簡明に表現するよう努めなければならない。
(火災調査書)
第46条 調査員は、火災調査書(別記第26号様式)を作成するものとする。
(火災原因損害調査報告書)
第47条 調査員は、火災原因(損害)調査報告書(別記第27号様式)に必要な事項を記載し、作成した調査書類を次に掲げる順に整理編冊しなければならない。
(1) 火災原因(損害)調査報告書
(2) 火災調査書
(3) 火災原因判定書
(4) 出火出動時における見分調書
(5) 実況(鑑識)見分調書
(6) 鑑定見分調書
(7) 質問調書
(8) 聞き込み調書
(9) 防火管理等調査書
(10) り災物件明細報告書(火災損害状況調書)
(11) 損害査定書
(12) 現場図面
(13) 現場写真撮影位置図
(14) 現場記録写真
(15) 前項に掲げるもののほか、原因の判定となった資料
2 前項の規定にかかわらず、火災の種別、規模等により必要がないと認めるときは、調査書類の一部を省略することができる。
3 調査書類の作成要領については、別に定める基準によるものとする。
(火災原因調査報告書)
第48条 調査員は、第33条第2項に定める略式火災原因判定書を用いた場合は、火災原因(損害)調査報告書に必要な事項を記載し、作成した調査書類を次に掲げる順に整理編冊しなければならない。
(1) 火災原因(損害)調査報告
(2) 火災調査書
(3) 略式火災原因判定書
(4) その他必要とする書類
第6章 報告
(調査結果の報告)
第49条 調査員は、火災原因(損害)調査報告書により消防署長に報告するものとする。
2 消防署長は、火災の規模及び原因、損害の状況等により特に必要と認める場合は消防長に報告するものとする。
第7章 り災の証明
第8章 震災時の火災調査
(組織的な調査の執行)
第51条 消防長等は、消防計画に定める対策本部の設置に係る地震(以下「特定地震」という。)の発生から、当該対策本部を解散するまでの間(以下「震災時」という。)に発生した火災の調査に対し、組織的な執行体制の確立に努めるものとする。
(情報の収集)
第52条 消防長等は、特定地震の発生直後から災害状況の記録及び調査のための情報収集に努めなければならない。
(震災に伴う火災の指定)
第53条 消防長等は、調査を円滑に実施するために、震災時に発生した火災のうち、期間及び地域を限定したもの(以下「震災に伴う火災」という。)を指定するものとする。
(火災調査活動)
第54条 消防長等は、震災に伴う火災の指定を受けた火災の調査については、り災証明書の発行のための火災損害状況調査を優先するとともに、出火原因、延焼拡大状況等の記録に重点を置いた震災時の火災調査活動を実施するものとする。
(調査員の確保)
第55条 消防長等は、震災後の行政対応を考慮し、震災に伴う火災による被害の記録のために必要な人員を確保するとともに、調査員に対して現場の見分、写真撮影等の記録を行わせるよう努めなければならない。
(資器材の確保)
第56条 消防長等は、震災時の火災調査活動に必要な資器材の確保に努めるものとする。
第9章 雑則
(書類の保存)
第57条 この訓令に基づき作成した調査書類は、栄町行政文書管理規則(平成14年規則第36号)により保存する。
(火災に関する照会の回答)
第58条 消防長等は、火災に関して関係機関から照会があったときは、その目的及び内容その他必要な事項について審査し、必要事項を回答することができるものとする。
2 照会対応については、栄町情報公開条例及び栄町個人情報保護条例に基づき、主管課と十分に協議したうえで回答するものとする。
(参考人又は証人としての出頭)
第59条 職員は、自己の担当した火災調査に関し捜査機関から参考人として出頭を要請され、又は裁判所から証人として呼び出し若しくは召喚を受けたときは、その内容を消防長に即報しなければならない。また、出頭した結果についても同様とする。
(補足)
第60条 この訓令に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。
附則
(施行期日)
1 この訓令は、令和4年4月1日から施行する。
(栄町火災調査規程の廃止)
2 栄町火災調査規程(平成13年栄町消防本部訓令第1号)は、廃止する。